ちょっと真面目な…。
今回はちょっと真面目なお話です。
しかも長文になりそうです。
恐れ入りますが、興味のある方のみお付き合いください。
東日本を中心に広い範囲で記録的な豪雨となり、各地で土砂災害や浸水などの被害が発生しています。
雨雲の動きが遅く、同じような所に停滞しているため、この後も豪雨が続き、さらに被害が拡大する恐れがあります。
日曜日にかけて、十分に警戒してください。
この夏はあちらこちらで豪雨が起こり、被害も多発しました。
中でも都市部で洪水が発生し人命が失われる被害が多く発生し、これらの災害を未然に防ぐことはできなかったのか、気象情報や災害情報のあり方が改めて問われました。
そして、先日気象業界で仕事をしている友人(仮にAさんとしておきます)から悩みを相談されました。
本当はもっと色々あるのですが、要約すると下記の2点のようなことです。
<1>
本来気象予測は100%確実なものではない。降水確率、台風の予報円、週間予報の信頼度付加、季節予報の確率的予測は不完全性を示す情報である。
しかし、マスメディアではこの不完全性を説明せず、最も確率の高い所だけが断定的に語られる傾向がある。そして視聴者は絶対的な信頼感を持つようになる。万が一の場合における危険性を考えると、このことが最近起こっている気象災害の根底にあるのではないだろうか。
<2>
「傘を持っていった方がいいでしょう」「コートやマフラーが必要です」「洗濯日和です」というのは過剰な情報で余計なお世話ではないか。
過剰な情報のせいで、視聴者は自分の頭で考えないようになってきているのではないか。それが予報が外れたときに一切の責任を気象庁や気象会社、予報士へ押し付けることにつながっているのではないか。
この意見を聞いて、私も本当に色々なことを考えました。
簡単に答えが出せる問題ではないですし、そもそもこれが正解、という答えなどないのだと思います。
でも、私なりに「気象情報のあるべき姿」について考えてみました。
まずは<1>の気象予測の不完全性について、Aさんの言うことは尤もです。理想論で言えば、気象情報はそうあるべきなのかもしれません。
ただ、優等生的意見だなあ、という感もぬぐえません。
現在、マスメディアで伝えている気象情報内で、その不確実性を細かくすべて伝えたとしたらどうなるのでしょう?
たとえば「今日の午後は雨の降る確率が30%、降らない確率が70%です」「今年の夏は平年より気温の高い確率が50%、平年並みの確率が30%、平年より低い確率が20%です」と伝えたとしたら、どうでしょう?
「つまり何なんだ!」って言いたくなりませんか?
その「つまり」の部分は視聴者が考えろということなのかもしれませんが、普通の人はそこまで気象のことばかりを考えて生活しているわけではありませんし、ニュースの合間にある程度大まかなことをすばやく伝えることはやはり必要なのだと思います。
それによって視聴者が気象情報に絶対的な信頼感を持つかというと、私はそうではない気がします。
気象予報が100%当たるものだと思っている人は多分ほとんどいないのではないでしょうか。皆「予報は外れる可能性のあるものだ」ということは当然理解していると思うのです。ただ、あまりに大きく外れたり、外れることが続いたりした場合は「どうして?」「どうにかならないの?」と怒りの声が出てくる訳です。
だからと言って、不確実性を伝える必要が全くないと言っているわけではありません。災害につながる可能性がある激しい気象現象については、たとえ確率が低かったとしても「起こるかもしれない」という危険性は必ず伝えなくてはいけないと思っています。
その気配を見逃さないように経験を積むことが、私も含め、今の気象キャスターに最も必要なことなのではないでしょうか。
次に<2>の過剰な情報について。
実は、「傘が必要かどうかは各自が判断すればいいのだから気象キャスターは予報だけを伝えればいい」というご意見は、Aさんの他にもかなり多数の方からいただいています。
その一方で、「朝の慌しい時間に、きょうは傘が必要かすぐにわかるのはありがたい」というご意見もたくさんの方からいただいています。
つまり、気象情報もテレビ局や番組によって個性を出して、視聴者は好みで見る番組を選ぶようにするのが一番いいのかもしれませんね。
個人的な意見を言わせていただくと、私は「折り畳み傘があるといいでしょう」「コートやマフラーが必要です」という情報は大いに結構だと思っています。
例えば「予報は晴れ時々くもり、降水確率は20%です」と言われて、傘を持っていきますか?持っていかない人がほとんどだと思います。
でも、「予報は晴れ時々くもりですが、夕方はにわか雨があるかもしれませんから、心配な方は折りたたみの傘を持っていくといいでしょう」と言われたらどうでしょう?
「コートやマフラーが必要です」も、朝から冷え込んでいる日にそのようなことを言う必要はないでしょう。でも例えば、「今朝は気温が高め、日中も過ごしやすいですが、夜は急に冷えますからマフラーなどを持っていくとよいでしょう」というのはどうですか?
身近な品物を具体的に出すことは、ただ予報だけを伝えるよりも印象を強くします。慌しい時間に他の支度をしながら見ている視聴者の方にはやはり役に立つのだろうと思います。
私の中継天気での小道具も、そのようなコンセプトで工夫していました。
それから、災害につながるような気象現象の時を除いて、ニュース番組内の気象情報は、少し「ほっとできる時間」として受け止められることが多いです。
その時には、「洗濯情報」や「ビール指数」など、ちょっと気を抜いて見られる生活情報を入れるのもありだと思うのです。
それに普段少し崩した姿勢で伝えていると、災害が起こる危険がある時に真剣に伝えると「いつもと違うぞ」ということを理解していただけるという効果もあるかと思います。
すっかり長くなってしまいましたが、今後の自分の気象キャスターとしてのあり方を考える上でも、今の自分の意見を書き留めておきたかったので…。
ここまで読んでくださいました方々、お付き合いくださいましてありがとうございました。
最後に、ブログにいただきましたコメントに1つお答えしたいと思います。
非公開でいただきましたコメントですが、「もっとデイリーな気象の話題を掲載して欲しい」とのご意見でした。
申し訳ありませんが、今のこのブログでは難しい、というのが現状です。
理由は2つありまして、まずは仕事との兼ね合いを考えて、これ以上頻度の高い更新が難しいということです。
それから、私自身が現在気象予報の現業を担当していないため、細かい情報をリアルタイムで入手するのが難しいということです。
ご了承ください。
最新の気象情報や災害情報に関しては、所属会社のLBWを始め、気象庁や民間気象会社のサイトをぜひ参考になさってください。
もちろん私自身も、デイリーな情報、というのは無理ですが、気象や災害に関してのコメントは随時させていただきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
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